猪鹿帳

比翼連理

京に残ることに決めた望美にとって初めての冬。
弁慶の仕事を手伝って、一緒に患者の家から帰宅途中だった。

「さーむーいー!」

真っ白な息を吐きながら望美は縮こまる。

「近いうちに雪が降りそうですね」

綺麗過ぎる星空を眺めて弁慶が答えた。つられて望美も仰ぎ見る。

「弁慶さんは冬って好きですか?」

何気なく尋ねた望美の肩を軽く引き寄せると囁く。

「好きですよ」
こうやって一緒に暖めあえるでしょう。

「もう・・・」

驚いている望美を包むようにうしろから抱き締める。

「望美さん・・・・・・これからもずっと・・・僕といてくれますか」

先ほどとは変わって、不安そうな声で問いた弁慶は望美を抱く力を強める。

「怖いのです。雪が降って暖かくなったら、雪とともに消えてしまいそうな君が・・・僕を置いていってしまうような気がしてならない」

弁慶の言葉を静かに聞いていた望美だが身じろぎ向かい合って、「私はここにいるよ」と一言一言思いを込めて言うと笑みを向けた。

「・・・ありがとう」

降り始めた雪に気づかぬまま、二人は長い間唇を重ねた。