猪鹿帳

もう一度逢うために、あなたを抱き締める。

二人が二人で本当に良かった (だってあなたを抱きしめることが出来るのだもの)

「あなたは僕の過去を・・・そしてこれから何をするのか、知っているのでしょう」

恐ろしくはないのですか?こんな神に逆らうような男が。

「でも私は・・・」

望美はしっかりと弁慶と目を合わせた。
ここで逃げたら弁慶さんはきっと私たちの元へは戻ってこない。
なぜか望美はそう感じていた。

「私は・・・過去じゃなく、あなたと作るこれからの未来を・・・信じたいです」

望美の言葉に弁慶は泣きそうに顔を歪ませた。

「望美さん・・・あなたは本当にいけない人だ」

弁慶は真っすぐに見つめる望美の頬に触れ、きつく抱きしめた。

「そんな事を言われてしまったら、僕はもうあなたから離れられなくなる」

あなたなら・・・僕の罪から目を逸らさずに見てくれるかもしれない。

あなたと僕を結び付けてくれた龍神に感謝を。
そして、ともに生きることを選んでしまった僕に・・・。